巌佐庸教授 退官記念講演
退官を記念いたしまして、巌佐庸教授にご講演いただきます。
九州大学数理生物学研究室出身の方々に、思い出話等を交えながら、自身の最新の研究についてご講演いただきます。
数理生物学研究室出身者 講演
山内 淳
京都大学生態学研究センター
巌佐さんの「ほぼ」最初の学生です。学生時代から自分の能力だけで研究をして来たと思っていましたが、歳をとって、実は巌佐さんに本当にお世話になってきたということを改めて実感しています。講演では私自身の自分史を絡めながら、私が学生だった頃の巌佐さんとの思い出や、その頃の研究室のことを振り返ってみようかと思います。
佐々木 顕
総合研究大学院大学先導科学研究科
1980年代中頃に、巌佐さんがアメリカから帰国して九州大学に赴任されたときに数理生物学講座の修士の学生でした。さっそく「組み換え率の進化」とか「性の数の進化」「病原体の最適増殖戦略」とかの研究を一緒にさせていただきました。満員の地下鉄の中で「セックスは病気だと思うか、佐々木君?」(翻訳:有性生殖は病原体へ対抗手段として進化したと思うか?」と言い残して「じゃ」と下車され、ひとり取り残された時のことを鮮明に覚えています。
望月 敦史
理化学研究所望月理論生物学研究室
巌佐先生に言いくるめられて以来20数年、分子生物学、発生生物学分野の数理的研究を続けています。先生の言う通り、"いばらの道"でもありましたが、同時に最先端の生命科学の展開に関わり、数理科学としても新たな理論を構築する、などの充実した研究を謳歌してきました。冒険のようなExcitingな研究生活のきっかけを与えてくれ、また見守ってくれた巌佐先生が退官されることを感慨深く思うと同時に、次の世代へも同じように(上手にそそのかして)研究者の幸せを伝えたいと考えています。
佐竹 暁子
九州大学理学研究院
巌佐先生にブラジルに行けると誘われ数理生物学の道へ。数理生物学分野の硬派に分類され、その後硬派流を貫いた研究を手がける。九州大学で学位を取得後、米国で博士研究員、スイスでグループリーダー、北海道大学で特任助教、准教授を経て、現在に至る。本シンポジウムの直前にカーニバルで賑わうブラジルに滞在予定。写真は東南アジアで観察される一斉開花調査風景。
大槻 久
総合研究大学院大学先導科学研究科
巌佐研には2003年から3年間在籍しました。「中期」の学生になるかと思います。研究室での出来事や巌佐先生から受けた研究指導のエピソードを思い出しながら、当時の研究がいかに現在の私に影響を与えているかについてお話したいと思います。
山口 諒
首都大学東京理工学研究科生命科学専攻/日本学術振興会特別研究員PD
2011年4月から2017年3月まで数理生物学研究室に在籍。巌佐先生のご指導のもと、種分化メカニズムと生物多様性創出機構の数理モデル研究で博士(理学)を取得。現在は、ゲノムデータと分子系統学を用いて、種分化遺伝子の特定を目指した手法開発を行っています。
立木 佑弥
Department of Animal and Plant Sciences, University of Sheffield
巌佐教授指導のもと、森林樹木の豊凶現象に関する進化生態学研究を行い、2013年3月博士(理学)取得。日本学術振興会特別研究員PD(北海道大学)、京都大学特定研究員(JST CREST)を経て、現在は日本学術振興会海外特別研究員としてシェフィールド大学(英国)にて植物の繁殖戦略の進化生態学研究に従事する。
波江野 洋
九州大学大学院理学研究院生物科学部門
2010年九州大学大学院生物科学専攻において巌佐庸教授のもとで学位取得。その後、ハーバード大学生物統計学部門・ダナファーバーがん研究所計算生物学部門においてMichor博士の研究室で博士研究員に従事する。2013年4月から現職。多種多様ながんについて、がんの一生を数理モデルで理解することを目指している。
中丸 麻由子
東京工業大学 環境・社会理工学院
思い起こせば、巌佐研究室の門戸を叩いたのが他大学修士2年生の時でした。
化学系の学生時代に「生物の観点から人間社会を数理モデルやシミュレーションによって解析して人間社会の本質を見極めたい」と思うようになりました。そしてトリヴァース著「生物の社会進化」に出会い、進化生態学の理論体系に惹かれました。その中でも互恵的利他行動が人間社会を研究する上でキーになるとわかりました。学会等に参加し、巌佐研究室の存在を知り、門戸をたたくことにしました。
当時、数理生物学の門外漢であった私をなぜか巌佐先生は博士課程の指導を引き受けてくださいました。そして今、大学の教員になって改めて巌佐先生の懐の深さ(なのか、物好きなのか?)に感心するとともに、拾っていただいて研究者として育てていただいたことに大変感謝をしております。
横溝 裕行
国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター リスク管理戦略研究室
私が巌佐研の大学院生だったときには、さまざまな野生生物の保全管理に適用できる基本理論を構築したいと考えて研究を行っていました。国立環境研究所に就職してからは、化学物質の生態リスク管理や、シカ等の増えすぎた大型哺乳類の個体群管理など、取り組みが求められている環境問題について、数理・統計モデルを用いた研究を行っています。
野下 浩司
科学技術振興機構 さきがけ / 東京大学大学院農学生命科学研究科 生産・環境生物学専攻
生物のかたちを定量化するための数理的な研究をおこなっています。対象は動物(巻貝、マウス、ヒト)、植物(ダイズ、コムギ、モモ)、人工物(土器)など様々。2010年4月から2015年3月まで数理生物学研究室に在籍していました。
瓜生 耕一郎
金沢大学理工研究域自然システム学系
2010年に九州大学数理生物学研究室で学位をとりました。現在は数理モデルを使い主に生物時計の研究を行っています。具体的には(1)哺乳類の概日リズム形成機構とその外部シグナルに対する位相応答、(2)脊椎動物の発生過程で観察される分節時計の同期過程を調べています。